
この記事ではZ-Buttを使用したメカニカルキーボード用のキーキャップのレジン用シリコン型を制作するための手順について解説しています。
全3回の記事で、2個めの記事です。今回はシリコン型を作成していきます。
前の記事
シリコン型を作成する手順
Z-Buttをプリントアウトする
まずは印刷するためのモデルを取得します。前回の記事でも紹介しましたが以下のリンクから取得することができます。
gitコマンドを使用することができない場合は、画面左側のClone or DownloadをクリックしてDownload ZIPをクリックするとファイル群をダウンロードできます。
展開すると以下のようなファイル構造になります。
- Alps
- MX
- 1u
- ZButt_1U_MasterBase.stl
- ZButt_1U_SculptingBase.stl
- ZButt_1U_StemCavity.stl
...
- 1-25u
- 1-5u
...
- Topre
- NoHassleContainer
...
最初の階層はキーキャップの軸のタイプがメーカー毎に並んでいます。Cherry MXやKailh、Gateron製のキースイッチに適合しているモデルファイルはMXというフォルダの中にあります。アルプス軸や東プレ用のもの(Topre)も用意されています。
次の階層はキーの大きさ毎にフォルダが並んでいます。キーキャップの大きさの単位はuというものを使用し、Aキーなどの文字キーを1uとします。Ctrlキーのような横長なものは2u(1uの2倍の長さ)と表現します。今回試しに作成するキーは1uとします。
最後の階層には各種3Dモデルがあります。MasterBaseおよびSculpitingBaseはキーの頭のほうのシリコン型を作成するためのもので、StemCavityはキーの軸側用のシリコンを作成するためのものとなっています。
MasterBaseに好きなキーキャップをはめて型をとります。SculptingBaseのほうは粘土細工でキーキャップを作成するときに使用します。
上記の2つのファイル(MasterBaseとStemCavity)を3Dプリンタで印刷します。StemCavityに関してはサポート材が必須となってきます。またStemCavityの積層痕がキーキャップ内側の軸周辺に出てしまうのでなるべく精度を高めに印刷したほうがいいです。
またStemCavityの印刷は非常に細い部品を立てて印刷するのでそれ相応のプリンターの調整が必要となってきます。レベリングはもちろん、冷却ファンなども効率よく動作するように設定してください。
また、StemCavity単品で印刷すると、湯口の冷却が間に合わず硬化する前に次の層を印刷しようとして、歪んでしまう問題が発生するので、1層ごとに休み時間を設けてあげるか、4個ぐらいまとめて印刷します。複数個あると1層あたりにかかる時間が長くなるので十分硬化することができます。以下の写真のように十字にStemCavity、余った所にMasterBaseを配置してよく印刷しています。(真ん中の細い湯口が失敗していますが。。(笑))

印刷が完了したら、フィラメントの糸引きなどを取り除いてから次に進みます。
シリコンを流し込む用の土台を作成・Z-Buttをはめ込む
シリコンを流し込む箱を作成します。前回の記事でも紹介しましたが以下の道具を使用します。

3M マスキングテープ 243J Plus 100mmX18m 243J 100
- メディア: Tools & Hardware
ブロックに関してはレゴブロックなどでも代用可能だと思います。
まずは4x4x2、の枠を作成します。SAキーのROW1(ESCキーなど)の場合は背が高いので高さを3ブロック分にする必要があります。この辺ははめてみて確認してください。

次に、シリコンが漏れ出さないように底面にマスキングテープなどを貼って蓋をします。これで枠組みの完成です。

出来上がった枠の中にプリントしたMasterBaseとStemCavityをはめ込んでいきます。それぞれ向きがありますので注意してください。四隅のどこか一箇所が丸くなっているはずです。この方向でキーキャップの正面を合わせるようになります。自分の場合は必ず右上に来るようにセットしています。
セットが完了したらキーキャップをMasterBaseの方にはめていきます。が、その前にMasterBaseの軸の部分をペンチなどでひねって取り除きます。なぜこうするかというと、キーキャップをはめた後に外そうとするとかなりの確率で軸がもげてキーキャップの軸内に残留してしまうからです。そしてこれがなかなか取れない。。

なのであらかじめ取り除いて、その部分に粘土やゴム状の接着剤などを置きそこにキャップの軸を埋め込んでいく感じで設置します。
はめ込む前に、キーキャップをよく掃除します。自分的な清掃方法は、新品のニトリルゴム手袋の指先に、少量の無水エタノール(またはイソプロパノール)を垂らして擦ることです。ティッシュやなどの繊維で拭き取ってもホコリが微妙についたりしますし、水だと跡が残り(乾くのに時間がかり)ます。またゴム手袋をすることで作業時に指紋がつかなくなります。

はめたあとは、キーキャップの向きが正しいか、キーの上面にホコリ等が乗っていないかなどを再度確認します。
シリコンを流し込む
流し込む用のシリコンを作成します。手順に従って主液と硬化材を混ぜ合わせてください。混ぜ合わせるときに気泡が発生しますが、それを真空保管庫を使用して潰していきます。十分に混ぜ合わせたら、真空保管庫内にカップごと置き、13-15分待ちます。これ以上放置するとシリコンが固まり始めて軸受けの細かい部分まで十分にシリコンが行き渡らなくなる可能性があります。
まずはMasterBaseの方にシリコンを流し込みます。キーの上面に当てながらゆっくり注いでいき、枠の一杯になるまで注ぎます。コチラは特に複雑な形状の部分がないので適当でも何とかなります。
次にStemCavityの方に流し込んでいきます。最初に気をつけておくべきことは満タンまで流し込んではいけないということです。12本の棒は、型を合わせた際にレジン、空気の逃げる通気口となっているので塞がないように7-8割で止めて、頭がちょっとだけ出ている状態にします。少なすぎても耐久力がなく、キーキャップを引き剥がすときに裂けてしまうことがあります。コチラも中心へゆっくりシリコンを注いでいきます。

両方ともシリコンが充填できたら、床などに底面をバシバシ叩きつけて細かい部分にシリコンを行き渡らせます。StemCavityに関しては真ん中の軸形成用の穴がとても小さいので、爪楊枝のような細く尖ったもので数回刺してみて、気泡がないかどうか確認してください。
取り出す
シリコンの指定時間経過後、枠から取り外します。枠はブロックなので捻るようにすると簡単に外すことができます。各モデルをシリコンから引き剥がすには、四隅を少しずつ剥がしながらモデルとシリコンの間に空気の層を作るような感じで剥がしていくと簡単に剥がすことができます。無理矢理に剥がそうとするとシリコンが裂けてしまうかもしれないので慎重に行ってください!
MasterBaseの方は簡単に剥がすことができますが、StemCavityの方はちょっとむずかしいです。ので私は割り切って3Dモデルの柱を折りながら取り外すようにしています。どうせ3Dプリンタでいくらでも作れるので消耗品と割り切ってバシバシ破壊していきます(笑) 中心のとても細い4つの柱がシリコン内に残りがちですが、爪楊枝で外側から押しだして取ります。
あとははみ出たシリコンを取り除けば無事に完成です🎉🎉

最後に
実際にレジンで固める前にしっかりとハマるかどうかチェックしてください。先程の四隅の丸くなっている部分を合わせるようにしないとハマりません。
レジンを流し込んで作品を作るよりも、この作業のほうが地味で退屈です(笑)
次回からはいよいよレジンを流し込んでキーキャップを作成していきます!!

